世界のこども発達支援
関連記事へ ↓

R0404 / スリランカ

資金も専門職も限られる地域で、発達支援の拠点をどう作った? スリランカの「Mathavam」

地域の支援拠点と共同の計画を表す三冊のファイルのイメージ。

行政、大学、地元の団体、海外の支援者が、運営の仕組みと資金や専門知識を持ち寄る。スリランカ北部の発達支援拠点「Mathavam」は、こうして開かれました。運営に関わった著者らは、開設後に研修や記録を見直した経験と、無料でも残る家族の負担を報告しています。

行政が運営の土台を担い、地域と海外が協力

Mathavamは2014年に開設された、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを主な対象とする施設です。地域の保健当局とジャフナ大学、地元団体に加え、米国や英国を拠点とする慈善団体が資金や専門的な協力を持ち寄りました。

管理は地域の保健当局の枠内で行い、専門職、職員、親などが参加する助言組織を設けています。運営の土台を行政が担い、専門家と家族が技術的な助言をする構成です。

図1の中央は子ども・親・職員、上は行政と助言組織、左は人材などの資源、下は資金源です。右の破線の枠には、教育・福祉・病院などの「今後の協力先」が置かれています。現在の役割と、これから広げる協力を分けて示した図です。

図1。中央の子ども・親・職員を、上の行政、左の資源、下の資金源が支えます。右側の破線の枠は今後の協力先で、全組織の参加が確定した図ではありません。
図1。中央の子ども・親・職員を、上の行政、左の資源、下の資金源が支えます。右側の破線の枠は今後の協力先で、全組織の参加が確定した図ではありません。
引用元画面:The Lancet Regional Health – Southeast Asia(2026-11-04取得)/Bhavana Sivayokan, Sambasivamoorthy Sivayokan, Thirunavukarasu Kumanan, Gitanjali Sathiadas, Nadarajah Sreeharan / The Lancet Regional Health – Southeast Asia / © 2023 The Author(s)/原典の条件:CC BY-NC-ND 4.0本文の説明・検討のために引用。原典:Establishing a novel partnership model to deploy health services for children with autism in a low-resource setting – experience from Sri Lanka原典の表示内容を変更せずWebPへ形式変換。継ぎ合わせ、数値変更、再組版、描き直しなし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)
図1。中央の子ども・親・職員を、上の行政、左の資源、下の資金源が支えます。右側の破線の枠は今後の協力先で、全組織の参加が確定した図ではありません。

親中心の活動から、研修と職員の直接支援を強化

当初は、経験の少ない職員と限られた監督体制のもと、親が活動を行う形が中心でした。著者らは、この仕組みでは親の期待に十分応えられず、職員の意欲にも影響したと述べています。その後は研修と専門家の助言を増やし、職員が直接関わる支援や記録を整えました。

子どもごとに、評価、目標、行った支援、家族や専門職との連絡を記録しています。支援の記録は毎週、チームの活動は毎月、助言組織では四半期ごとに検討しました。記録を次の支援と運営の見直しにつなぐ流れです。

評価し、家族と計画し、支援を振り返る

図2の中央は、診断や疑いをきっかけに施設へ登録し、評価を行い、家族と共同で計画を立て、支援と振り返りへ進む流れです。登録の段階では、小児科、精神科、眼科、耳鼻科などへの紹介とも往復できる形になっています。

図の左は言語や運動、生活の評価、右は親向けの学びや言語・作業療法、親同士の支え合いなどの選択肢です。その間に、家族と計画を立て、振り返る工程を置いています。評価から一つの支援へ直行するのではなく、家族と相談して組み合わせる施設の運用を示しています。

図2。中央は登録から評価、家族との共同計画、支援、見直しへ進む流れです。左に評価の領域、右に支援の選択肢が示され、登録段階では医療の他分野への紹介とも往復します。
図2。中央は登録から評価、家族との共同計画、支援、見直しへ進む流れです。左に評価の領域、右に支援の選択肢が示され、登録段階では医療の他分野への紹介とも往復します。
引用元画面:The Lancet Regional Health – Southeast Asia(2026-11-04取得)/Bhavana Sivayokan, Sambasivamoorthy Sivayokan, Thirunavukarasu Kumanan, Gitanjali Sathiadas, Nadarajah Sreeharan / The Lancet Regional Health – Southeast Asia / © 2023 The Author(s)/原典の条件:CC BY-NC-ND 4.0本文の説明・検討のために引用。原典:Establishing a novel partnership model to deploy health services for children with autism in a low-resource setting – experience from Sri Lanka原典の表示内容を変更せずWebPへ形式変換。継ぎ合わせ、数値変更、再組版、描き直しなし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)
図2。中央は登録から評価、家族との共同計画、支援、見直しへ進む流れです。左に評価の領域、右に支援の選択肢が示され、登録段階では医療の他分野への紹介とも往復します。

利用料は無料でも、交通費や休業の負担があった

報告では、2014年4月から2022年12月までに487人へサービスを提供し、そのうち336人がASDと診断されていました。施設が当時までに、どのような子どもへ支援を届けてきたかを示す利用記録です。

利用は無料ですが、家族には交通費、教材費、仕事を休む負担がありました。人員不足や職員の入れ替わりによる待機、地域の言語に対応する評価・教材の不足も、著者らが挙げています。この報告は一施設の運営経験であり、別のモデルとの比較によって支援効果や採算を測った試験ではありません。

この記事のまとめ

  • 資金・人材・専門性を持ち寄って拠点を運営した

    2014年開設のMathavamは、行政、大学、地域と海外の団体が協力する施設です。2022年末までの利用者487人中、336人がASDと診断されていました。

  • 施設の運営と、家族とつくる支援の流れを結び付けた

    行政の運営枠と、地域・海外の協力を組み合わせました。開設後も研修と記録を見直し、家族に残る交通費や時間の負担まで報告しています。

  • 日本の児童発達支援にも、家族・地域との連携を示す指針がある

    こども家庭庁のガイドラインは、本人への支援に家族、移行、地域との連携を組み合わせます。Mathavamは異なる制度や資金で運営されていますが、誰が支援を担い、どこで連携するかを考えるための一事例として読み比べられます。

    日本の参考資料:こども家庭庁:児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)
  • 役割と見直す場を、運営と支援の両方に用意する

    誰が人材や資金を持ち寄り、家族とどこで計画を共有し、記録をいつ振り返るか。その具体的な組み合わせに、限られた資源の中で支援拠点を作った工夫が表れています。

    日本の参考資料:こども家庭庁:児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)

日本の制度・資料の確認:2026年11月4日。

出典

Establishing a novel partnership model to deploy health services for children with autism in a low-resource setting – experience from Sri Lanka
原典日:2023-07-29 / 取得:2026-11-04

画像について

冒頭のイラストは、地域で協力して支援の場をつくることを表したイメージです。Mathavamの実際の建物や設備を再現したものではありません。