ASDの登録は増え、ADHDの登録は減る――カザフスタンの子どもの診断記録に何が起きていたか

同じ国の診断記録でも、自閉スペクトラム症(ASD)は増え、注意欠如・多動症(ADHD)は減っていました。カザフスタンの研究が調べたのは、2014〜2024年の15歳以下の全国登録です。数字を読む鍵は、子どもの状態だけでなく、誰が診断し、どの制度へ登録するかにもあります。
214,904件は、214,904人ではない
研究チームが集計したのは、国の医療登録に残る214,904件の記録です。登録が続く子どもは、翌年も一つの記録を残します。したがって、この合計は子どもと年の組み合わせであり、別々の子どもの人数ではありません。
研究は各年の15歳以下の人口を分母にし、ASD、ADHD、知的障害、その他の発達に関する登録を比較しました。診断は当時使われていたICD-10分類で集計しています。論文のASD群にはレット症候群なども少数含まれますが、著者らは、これらを除いた解析でも結論は変わらなかったと報告しています。匿名データでは同じ子どもを年をまたいで追えないため、ある診断から別の診断へ変わった過程を個人ごとに確認することはできません。
登録の推移と、地域ごとの違い
ASDに分類された登録は、子ども10万人当たり16.8件から190.5件へ増えました。ADHDは6.1件から2.6件へ減っています。一方、知的障害の人口10万人当たりの登録件数の年間変化は、統計的に有意ではありませんでした。

引用元画面:Frontiers in Psychiatry(2026-10-15取得)/Amir Baikatov, Ayat Assemov, Dias Alimbetov and Almira Kustubayeva(2026), Figure 1. Copyright © 2026 Baikatov, Assemov, Alimbetov and Kustubayeva./CC BY 4.0原典:Diverging trends in neurodevelopmental disorder diagnoses among children aged below 16 years in Kazakhstan (2014-2024): a national registry study.公式実Webの対象図表と図番号・原captionをDPR2で撮影。原図/全列/全パネル/必要凡例を保持し、DOM・文字・データの変更なし。周囲の操作アイコンを含む原表示は論文図表の文脈としてのみ示し、サイトUI全体をCC許諾としない。比率を保って縮小表示。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

ASDが増えたことで、登録全体に占める知的障害の構成比は小さくなりました。しかし、構成比が下がることと、人口当たりの登録が減ることは別です。診断別の数字を見ると、その違いが現れます。
同じ2024年でも、地域ごとに人口10万人当たりの登録件数は異なりました。論文の地図は、ASD、ADHD、知的障害、その他の発達に関する登録をそれぞれ比べています。色の濃さが示すのは、人口当たりの登録の多さです。著者らは、診断を受ける機会や支援につながる経路の違いも関わる可能性を挙げています。地図を、子どもの状態だけで決まる地域差として読まないことが、この研究の解釈につながります。

引用元画面:Frontiers in Psychiatry(2026-10-15取得)/Amir Baikatov, Ayat Assemov, Dias Alimbetov and Almira Kustubayeva(2026), Figure 2. Copyright © 2026 Baikatov, Assemov, Alimbetov and Kustubayeva./CC BY 4.0原典:Diverging trends in neurodevelopmental disorder diagnoses among children aged below 16 years in Kazakhstan (2014-2024): a national registry study.公式実Webの対象図表と図番号・原captionをDPR2で撮影。原図/全列/全パネル/必要凡例を保持し、DOM・文字・データの変更なし。周囲の操作アイコンを含む原表示は論文図表の文脈としてのみ示し、サイトUI全体をCC許諾としない。比率を保って縮小表示。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

診断の経路と、公的支援への登録
論文によると、ASDは児童精神科医による診断と公的登録につながる一方、ADHDには同じ登録経路が必須ではありません。民間の評価や教育上の評価も、国の診断登録へ入らなければ、このデータには残りません。
2021年にASDに関する障害認定・給付の制度が広がった時期と、その後の登録増加は重なっています。著者らは、診断の把握や支援へのアクセスの変化として解釈しています。制度が増加を引き起こしたと証明したわけでも、ADHDの子どもが実際に減ったと示したわけでもありません。
この記事のまとめ
- 全国の登録記録を、診断と制度への経路から読み直した
カザフスタンの2014〜2024年の記録では、ASDとADHDで異なる登録の動きがありました。同じ子どもの複数年の記録も含むため、件数と人数を分けています。
- 数が増えた理由を、発生数だけで説明しない
登録条件や診断・認定の経路まで含めて統計を読むことが、支援需要を考える上で重要です。登録の増減は、そのまま病気の増減を表すものではありません。
- 日本の状況と比べると
日本の文科省の2022年調査も、担任等が答えた教育的支援の必要性であり、医師の診断による人数ではないと明記しています。国外の診断登録と同じ種類の統計ではありません。
日本の参考資料:文部科学省:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の調査(令和4年) - 日本で参考にするなら
海外と日本の数字を並べる前に、誰を、誰が、何の制度や基準で数えたかを確認する読み方が参考になります。
日本の制度・資料の確認:2026年11月2日。
出典
Diverging trends in neurodevelopmental disorder diagnoses among children aged below 16 years in Kazakhstan (2014-2024): a national registry study.
原典日:2026-07-24 / 取得:2026-10-14
画像について
冒頭の線画は、年ごとに残る登録記録をイメージした説明イラストです(Jag Project / AI生成)。実際の登録用紙や、この研究のデータを再現したものではありません。



