ASDのある子との暮らしで、親は何を支えにしていたか――イタリアの母親と父親36人の語り

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てる親の経験には、将来への心配だけでなく、暮らしの変化や人とのつながりもあります。北イタリアの二つの支援施設で、母親19人と父親17人が語った研究では、専門職の支援と、ほかの親との何気ない会話の両方が登場します。苦悩と前向きな変化を、別々の家族像に分けずに読んだ報告です。
22人の子どもの家族から、36人が参加
参加した親36人の子どもは22人で、年齢は5〜11歳でした。診断から少なくとも2年がたっており、ASDのレベル2(多くの支援が必要)またはレベル3(非常に多くの支援が必要)に分類された子どもです。
聞き取りは2022年3〜7月に行われました。子どもは多職種による支援を受けており、ほかの家族に障害や慢性疾患がある場合は参加条件に当てはまりません。研究チームは、親の語りを、経験した変化、支えとなるもの、困難という領域から整理しました。

引用元画面:PLOS One(2026-10-15取得)/Chiara Fante, Fabio Fontana, Francesca Capelli, Barbara Dioni, Mattia Pezzi, Cinzia Raffin, Raffaele De Luca Picione and Alessandro Musetti(2026), Table 1. © 2026 Fante et al./CC BY 4.0原典:From challenge to growth: A qualitative study of parental adaptation to Autism Spectrum Disorder.原図表と元の説明を、公式サイトの画面から撮影しました。図表の内容は変更せず、全体が見えるよう縮小表示しています。画面の操作ボタンなどは、論文図表のライセンスの対象とはしていません。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

専門職への相談と、待合室での親同士の会話
親は、専門職から子どもの伝え方や関わり方を学ぶ経験を話しました。絵などを使ってコミュニケーションを支える方法について、子どもの希望を理解しやすくなったと語る親もいます。これらは、親が支援をどう経験したかという報告です。
親同士のつながりにも意味がありました。待合室や、コーヒーを飲みながらの会話など、正式な研修ではない場で経験を共有することが支えになったと話しています。ほかの家族が自分の経験を分かってくれることと、専門職の知識を得ることの両方が語られました。
前向きな変化と、続く心配を一緒に読む
子どものコミュニケーションや日々の活動に変化を感じ、暮らしに余裕ができたと語る親がいました。一方で、将来の生活への不安、学校や地域で受け入れられない経験、休む時間の不足も話されています。前向きになれば困難が終わる、という一つの物語ではありません。
図1の「支え」には、家族の持つ資源、意味のある人間関係、教育や専門職の支援と、自分で工夫する力が並んでいます。「困難」には、ケア・教育サービスの問題、自閉症のある人に合わない環境、負の感情や自信の持ちにくさが含まれます。「経験した変化」の領域にも、成長や家族の変化だけでなく苦悩が置かれており、前向きな経験だけを取り出した分類ではありません。

引用元画面:PLOS One(2026-10-15取得)/Chiara Fante, Fabio Fontana, Francesca Capelli, Barbara Dioni, Mattia Pezzi, Cinzia Raffin, Raffaele De Luca Picione and Alessandro Musetti(2026), Fig 1. © 2026 Fante et al./CC BY 4.0原典:From challenge to growth: A qualitative study of parental adaptation to Autism Spectrum Disorder.原図表と元の説明を、公式サイトの画面から撮影しました。図表の内容は変更せず、全体が見えるよう縮小表示しています。画面の操作ボタンなどは、論文図表のライセンスの対象とはしていません。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

この研究は一時点の面接で、同じ親の変化を長期間追ったものではありません。特定の支援が家族の暮らしを改善したと比較する試験でもありません。専門施設につながる親が、何を負担に感じ、何を支えとしていたかを、母親と父親の双方から聞いた研究です。
この記事のまとめ
- 親が支えと感じたことを、苦悩とともに聞いた
イタリアのASD児22人の母親19人・父親17人への面接では、専門職の助言、親同士の何気ない会話、暮らしの変化と将来の不安が語られました。
- 支援の成果を、悩みがなくなったかだけで測らない
前向きな経験と続く不安が同じ暮らしの中にあることを伝えた点に意義があります。交流や支援の因果効果を測った結果ではありません。
- 日本の状況と比べると
日本では、例えば長崎県が先輩保護者によるメンター派遣を案内しています。イタリアの施設で生まれた会話と、地域の相談事業は別の形の接点です。
日本の参考資料:長崎県:発達障害児及び家族への支援 - 日本で参考にするなら
専門相談と、親同士で経験を話せる場の両方を考える視点が参考になります。話すことを望まない親もいるため、参加を前向きさの条件にはしません。
日本の制度・資料の確認:2026年11月2日。
出典
From challenge to growth: A qualitative study of parental adaptation to Autism Spectrum Disorder.
原典日:2026-03-17 / 取得:2026-10-14
画像について
冒頭の線画は、親同士が話す場をイメージした説明イラストです(Jag Project / AI生成)。実際の研究施設や参加者を再現したものではありません。



