母親と父親で、ストレスへの対処は違う?ASD診断時のフランス554人調査が見た「組み合わせ」

子どもが自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたとき、親は問題に取り組む、人に相談する、自分を責めるなど、複数の方法で状況に向き合うことがあります。フランスの研究チームは、診断時の親554人の回答を分析しました。一つの対処法だけでなく、その組み合わせを調べた研究です。
個々の対処法では、母親と父親に違いがあった
研究には、2012〜2019年にフランスの専門施設で新たに診断された子どもの家族を追うELENAコホートのデータを用いました。今回の分析対象は350家族の母親318人、父親236人です。204家族は両親が、146家族はどちらか一人が回答しました。論文は2026年に公表されています。
研究者は対処の質問票を再検討し、「問題解決・前向きな捉え直し」「周囲に支援を求めること」「願望的な思考」「自分を責めること」の四つの側面として分析しました。
父親の回答では、問題解決・捉え直し、支援を求めること、自分を責めることの得点が母親より低い結果でした。一方、願望的な思考には有意な差がありませんでした。母親・父親という区分は本人の申告で、生物学的な性別の違いを測ったものではありません。

引用元画面:Journal of Autism and Developmental Disorders / Springer Nature Link(2026-10-14取得)/Maëva Monnier, Cécile Michelon, Cécile Rattaz, Fanny Redlinger, Hugo Peyre, Amaria Baghdadli & the Elena Study Group(2026), Figure 1. © The Author(s) 2026./CC BY 4.0原典:Coping Profiles of Parents at the Time of Their Child’s Autism Diagnosis: Differences Between Mothers and Fathers, and Associations With Family Mental Health公式Full size画面の原図と原captionを無加工で撮影。表示時は比率を保って縮小。図中文字・色・値の変更なし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

対処の組み合わせで見ると、単純な母父の区分にならない
回答の組み合わせから、研究者は三つの群を見いだしました。複数の対処を中程度から高い程度で使う群289人、問題解決・捉え直しが高く願望的な思考や自責が低い群139人、問題解決等が低く願望的な思考や自責が高い群126人です。

引用元画面:Journal of Autism and Developmental Disorders / Springer Nature Link(2026-10-14取得)/Maëva Monnier, Cécile Michelon, Cécile Rattaz, Fanny Redlinger, Hugo Peyre, Amaria Baghdadli & the Elena Study Group(2026), Figure 2. © The Author(s) 2026./CC BY 4.0原典:Coping Profiles of Parents at the Time of Their Child’s Autism Diagnosis: Differences Between Mothers and Fathers, and Associations With Family Mental Health公式Full size画面の原図と原captionを無加工で撮影。表示時は比率を保って縮小。図中文字・色・値の変更なし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

どの群に属するかについて、母親と父親の間に全体として有意な差はありませんでした。個々の対処法の得点差と、組み合わせとしての群の違いは、同じ結果ではなかったのです。
母親・父親のどちらでも、問題解決等が中心の群に比べ、残る二群では不安の得点が高い結果でした。母親の群ではストレスの水準、父親の群では抑うつの得点にも差がありました。母親が答えた子どもの不安など、内面の困難にも群による差が見られています。これらは質問票による評価で、精神疾患の診断件数ではありません。
三つの群は、固定した親のタイプではない
データを二つに分けて確かめると、一方では三群、もう一方では二群の構成になりました。群ごとの得点も完全には再現されていません。願望的な思考の測定には、ほかの側面より信頼性が低いという留保もあります。
今回の分析は診断時の一時点を調べ、関係に影響するほかの要因を調整していません。対処の仕方が不安を引き起こした、ある方法に変えれば心の状態が改善する、という因果関係までは示していません。また、質問票に答えなかった526家族は含まれず、分析に含まれた子どもは含まれなかった子どもよりIQが高いという差がありました。
この記事のまとめ
- ASD診断時の親の対処を、複数の方法の組み合わせとして分析した
フランスの親554人の回答では、ストレスへの向き合い方の組み合わせと、母親・父親それぞれの心理状態との関連を調べました。
- 親を「前向きかどうか」の一つの軸で分けない
同じ親でも複数の方法で状況に向き合うことや、母親・父親で関連が異なることを捉えた点に意義があります。特定の対処法の改善効果を試した研究ではありません。
- 日本の状況と比べると
日本の家族支援情報でも、子育てを学ぶプログラムと精神面のケアが紹介されています。フランスの分析で得た群を、日本の親の性格分類に使う話とは異なります。
日本の参考資料:国立障害者リハビリテーションセンター:家族支援 - 日本で参考にするなら
家庭を代表する一人だけに尋ねるのではなく、それぞれの養育者がどんな支えを望むかを考える視点が参考になります。
日本の制度・資料の確認:2026年11月2日。
出典
Coping Profiles of Parents at the Time of Their Child's Autism Diagnosis: Differences Between Mothers and Fathers, and Associations With Family Mental Health.
原典日:2026-05-02 / 取得:2026-10-14
画像について
冒頭の線画は、記事内容をもとにした説明イラストです(Jag Project / AI生成)。実際の研究参加者や調査場所を再現したものではありません。



