信仰が支えにも、罪悪感にもなる――イラン・ウルミアのASDのある子を育てる母親17人の語り

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てる母親にとって、信仰はいつも同じ形の支えになるのでしょうか。イラン北西部ウルミアで17人に聞いた研究では、信仰に希望を見いだす語りと、罪悪感に結び付く語りの両方がありました。家族や社会の反応、支援にかかる費用も、母親の暮らしの一部として語られています。
一つの支援施設を利用する母親に聞く
研究チームは、ウルミアのPishgamane Omidという専門施設で、2023〜2024年に聞き取りを行いました。参加した17人は、ASDと診断された子どもの主な養育者で、全員が同市に暮らす都市部の家族でした。
面接は母親が話しやすいペルシャ語かアゼルバイジャン・トルコ語で行い、語りを分析しました。研究者は、診断の捉え方、受け止める過程、生活上の困難、母親の人生への影響を整理しています。

引用元画面:BMC Psychology(2026-10-16取得)/Fatemeh Moghaddam-Tabrizi, Samira Orujlu, Fariba Hosseinzadegan, Mahdiyeh Abbasi, Mehran Soleymani (2026), Table 2. © The Author(s) 2026/CC BY 4.0原典:Faith, stigma, and resilience: a qualitative study of the experiences of mothers raising children with autism spectrum disorder in West Azerbaijan, Iran.公式Webの原表題・全2列・8問を撮影。表の文字や数値は変更せず、縦横比を保って表示しています。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

意味を見いだすことと、自分を責めること
母親の中には、子どもとの暮らしを信仰の中で捉え、祈りや信頼を支えとして語った人がいました。一方で、診断を罰のように受け止め、罪悪感や怒りを感じた人もいました。ここで報告しているのは母親の捉え方で、宗教的な考えをASDの原因として示したものではありません。

引用元画面:BMC Psychology(2026-10-16取得)/Fatemeh Moghaddam-Tabrizi, Samira Orujlu, Fariba Hosseinzadegan, Mahdiyeh Abbasi, Mehran Soleymani (2026), Table 3. © The Author(s) 2026/CC BY 4.0原典:Faith, stigma, and resilience: a qualitative study of the experiences of mothers raising children with autism spectrum disorder in West Azerbaijan, Iran.公式Webの原表題と全3列・先頭4行を連続撮影。Table3の第1分類を掲載し、以降の分類は省略しています。文字や列の再配置・合成はしていません。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

周囲の見方を恐れて、診断を家族にも伝えなかった経験も語られています。反対に、子どもの伝え方を理解して関わり方を変えたり、団体や相談先から励ましを得たりした母親もいました。受け止め方は、一つの順序で全員が同じように変わるものとして描かれていません。
気持ちの変化だけでは片づかない暮らし
母親は、公共の場での視線、親族からの非難、支援の費用についても話しました。子どもの支援に支出を集中させ、ほかの生活費を減らした家族や、仕事を離れた母親の経験もあります。深い苦悩と同時に、子どもの反応や変化に喜びを感じ、自分の人生に意味を見いだす語りもありました。
研究は、一つの専門施設につながる母親の経験です。支援機関につながっていない家族や、ほかの地域の経験まで代表するものではありません。母親の受け止め方だけでなく、実際の費用、周囲の反応、相談相手との関係を含む暮らしとして読む報告です。
この記事のまとめ
- 母親の信仰と、家族・社会の反応を具体的な語りから捉えた
イラン・ウルミアの母親17人への面接では、信仰が希望になる経験と罪悪感に結びつく経験、家族の反応や支援費用が併せて語られました。
- 同じ価値観が、全員に同じ支えになるとは考えない
信仰を一括して肯定・否定せず、本人にとっての意味を聞いた点に意義があります。都市部の一施設の語りを、イランの全家庭や日本の家庭へ一般化するものではありません。
- 日本の状況と比べると
日本でも、例えば練馬区は保護者の孤立を防ぐ相談や先輩保護者による相談を案内しています。これは宗教を扱う研究ではなく、悩みを話せる接点の地域例です。
日本の参考資料:練馬区:発達障害児者家族支援事業 - 日本で参考にするなら
相談先の価値観を押しつけず、その親にとって何が支えで何が負担かを確かめる姿勢が参考になります。家族内でも受け止め方が同じとは決めないことが大切です。
日本の制度・資料の確認:2026年11月2日。
出典
Faith, stigma, and resilience: a qualitative study of the experiences of mothers raising children with autism spectrum disorder in West Azerbaijan, Iran.
原典日:2026-07-09 / 取得:2026-10-14
画像について
冒頭の線画は、話を聞く場をイメージした説明イラストです。研究を行った施設や実際の面接場面の再現ではありません。 窓外の建物や室内の小物も、現地を記録したものではありません。



