世界のこども発達支援
関連記事へ ↓

R0261 / レバノン

ADHDと家族歴や過去の健康情報はどう関わる? レバノンの比較研究を、原因と混同せず読む

色の違うしおりを挟んだ二冊の調査ファイルと虫眼鏡、鉛筆を描いたイラスト。

レバノンで注意欠如・多動症(ADHD)のある61人と比較群58人を調べると、母親が答えた家族歴や過去の健康情報に、診断との関連が見られました。ただし、人数は少なく、関連の強さの推定には大きな幅があります。どんな人を比べ、何を聞いた結果なのかを、数字と一緒に見ていきます。

診療所の61人と、学校から募った58人を比較

対象は6〜24歳で、ADHD群は専門診療所から、対照群は通常の学校から募りました。ADHD群では専門医が診断しています。一方、対照群は母親に診断や疑いの有無を尋ねた集団で、全員に同じ診断用検査を行ったわけではありません。

研究者は母親に電話で、妊娠中や出生時の健康、子どもの健康、家族歴などを聞きました。独自に作った質問票で、過去の出来事を思い出して答えています。表1の平均年齢は、ADHD群13.3歳、対照群14.3歳でした。

家族歴ありは20人と3人。関連の推定には大きな幅

表1では、ADHDの家族歴があると回答したのはADHD群20人、対照群3人でした。家族歴には親やきょうだいだけでなく、二親等・三親等の親族も含まれています。

複数の情報を一緒に分析した表5では、家族歴とADHDの有無の関連を表すオッズ比が12.033でした。95%信頼区間は2.950〜49.072と大きな幅があります。この研究での関連の指標であり、ある子どもの発症確率を12倍と計算する数字とは異なります。

表1では、家族歴ありの20人と3人に加え、各群の年齢や居住地域、服薬の回答などが並びます。二群は診断や募集の経路が異なるので、表に載る割合をそのままレバノン全国の割合と読むことはできません。表の人数と、次の分析で条件を調整して得た関連は、別の情報です。

表1。ADHD群61人と対照群58人の内訳です。ADHDの家族歴ありは20人と3人。原注記では、一〜三親等を含む家族歴として扱っています。全国の発症率を示す表ではありません。
表1。ADHD群61人と対照群58人の内訳です。ADHDの家族歴ありは20人と3人。原注記では、一〜三親等を含む家族歴として扱っています。全国の発症率を示す表ではありません。
出典:©2024 Melyssa Assaf et al. / International Journal of Environmental Research and Public Health / MDPI。PDF提供:PubMed Central(NLM)。 / Table 1 / CC BY 4.0
NLMが正規配信する正式版PDFの原図表全体・原caption・注記を連続範囲で画像化しWebPへ変換。数値/文字/配列を変えず、翻訳画像・継ぎ合わせ・補修なし。
図表を原寸で読む(横に移動できます)
表1。ADHD群61人と対照群58人の内訳です。ADHDの家族歴ありは20人と3人。原注記では、一〜三親等を含む家族歴として扱っています。全国の発症率を示す表ではありません。
図表の出典と表示範囲

Correlational Insights into Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Lebanon
Melyssa Assaf et al.
Published version deposited in PMC; PMC11353674.1 / PDF 5頁
Table 1
PDF取得:2026-11-04 / 画像化:2026-11-04(原PDFを216 dpiで画像化)

妊娠や乳児期の回答も関連したが、原因は確定できない

妊娠中の貧血や自己申告のストレス、新生児期の黄疸の回答も、ADHD群に属する高いオッズと関連しました。母乳育児の回答は低いオッズと関連しています。過去の状況を思い出して答えた比較なので、当時の選択を変えれば予防できたという結論にはつながりません。

原著は、過去の記憶の偏り、未検証の質問票、広い年齢層、分析に含めていない社会経済状況などを限界として挙げています。診療記録で過去の出来事を確かめた追跡研究ではないため、結果を家族の過去の選択の責任に結び付けることはできません。

表5のオッズ比は、妊娠中の貧血3.654、自己申告のストレス3.268、黄疸5.020、母乳育児0.263でした。たとえば黄疸の95%信頼区間は1.438〜17.532と広く、関連の大きさは精密には定まっていません。体外受精はオッズ比5.135でも区間0.909〜29.011が1を含み、この分析では有意な関連が確認されていません。数字の大きさだけで結論をそろえない読み方が必要です。

表5。家族歴や過去の健康情報のオッズ比と95%信頼区間を示します。推定には幅があり、体外受精の区間は1をまたぎます。妊娠中の行動や授乳の効果を比較した試験ではありません。
表5。家族歴や過去の健康情報のオッズ比と95%信頼区間を示します。推定には幅があり、体外受精の区間は1をまたぎます。妊娠中の行動や授乳の効果を比較した試験ではありません。
出典:©2024 Melyssa Assaf et al. / International Journal of Environmental Research and Public Health / MDPI。PDF提供:PubMed Central(NLM)。 / Table 5 / CC BY 4.0
NLMが正規配信する正式版PDFの原図表全体・原caption・注記を連続範囲で画像化しWebPへ変換。数値/文字/配列を変えず、翻訳画像・継ぎ合わせ・補修なし。
図表を原寸で読む(横に移動できます)
表5。家族歴や過去の健康情報のオッズ比と95%信頼区間を示します。推定には幅があり、体外受精の区間は1をまたぎます。妊娠中の行動や授乳の効果を比較した試験ではありません。
図表の出典と表示範囲

Correlational Insights into Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Lebanon
Melyssa Assaf et al.
Published version deposited in PMC; PMC11353674.1 / PDF 8頁
Table 5
PDF取得:2026-11-04 / 画像化:2026-11-04(原PDFを216 dpiで画像化)

日本の説明と合わせ、今の困りごとへの支援を考える

群馬県の発達障害者支援センターの基本ガイドは、発達障害の原因は十分に解明されておらず、親の育て方や本人の努力不足が原因ではないと説明しています。国の発達障害ナビポータルは、診断で家庭や学校の情報、行動観察、必要な検査を合わせる過程を紹介しています。

これは、レバノンの小さな集団から、次の調査で確かめる関連を探した報告です。結果を個人の診断や妊娠中の治療、授乳方法の選択へ直接当てはめることはできません。今必要な支援を考える情報と、過去の情報の関連を調べる研究とは、役割が異なります。

この記事のまとめ

日本の制度・資料の確認:2026年11月4日。

出典

Correlational Insights into Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Lebanon(NLM公開の原著PDF)
原典日:2024-08-05 / 取得:2026-11-04

群馬県発達障害者支援センター:発達障害の理解と支援のための基本ガイド
原典日:公表日未記載 / 取得:2026-11-04

画像について

冒頭のイラストは、二つの集団の過去の情報を比べる研究の概念画です。実際の質問票や診療施設を再現したものではなく、特定の行動がADHDを引き起こすという因果関係を示す図でもありません。