自閉症児の診察、医師にも関わり方の難しさ。ロシアで医療者と家族の受診経験を調査

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが日常の病気で受診するとき、医療者はどんな準備をしているのでしょうか。ロシアの調査では、診療経験のある医師からも、併存する病気の診断や経過観察の難しさが報告されました。家族には、医療の質への評価と受診までの経験を尋ねています。
2020年に、三つの立場から回答を集める
2022年公表の研究で、調査は2020年春から夏にオンラインで行われました。医学生・研修医247人、精神科以外の医師100人、ASD児のケア提供者158人が参加。それぞれの経験に合う質問に答え、医師と家族を一対一で対応させてはいません。
医師は全員、専門領域で子どもに直接対応していました。小児科50%、神経科34%、耳鼻科、外科、眼科、アレルギーなど16%です。ASDの特徴や教育歴に加え、併存する健康問題、子どもとのやり取り、家族のアクセスの困難も扱っています。
診療を経験した医師の80.6%が、併存する病気の対応に難しさ
ASDのある人と診療で関わった経験は、医師の62%、学生・研修医の17.8%が報告しました。経験者の中で、併存する病気の診断や経過観察が難しかった回答は、医師80.6%、学生・研修医63.6%です。分母は全員ではなく、関わった経験のある人です。
家族への質問では、医療の質に満足しているか、受診までにどんな障壁があったかを聞きました。医師の知識や経験だけでなく、受ける側の体験を並べて調べています。ただし、回答した医師と家族は、一組ずつ対応しているわけではありません。
図1では、公立の外来診療、公立病院、私立病院ごとに、家族が医療の質を「低い・普通・高い」の三段階で評価しています。「高い」はそれぞれ35.6%、46.6%、39.9%で、いずれも「普通」が最も大きい区分でした。医療機関の検査成績や治療効果を比べた図ではなく、今回回答した家族の受け止めです。

引用元画面:BMC Medical Education(2026-11-04取得)/Y. O. Mukhamedshina, R. A. Fayzullina, I. A. Nigmatullina, C. S. Rutland, V. V. Vasina / BMC Medical Education/原典の条件:CC BY 4.0本文の説明・検討のために引用。原典:Health care providers’ awareness on medical management of children with autism spectrum disorder: cross-sectional study in Russia原典の表示内容を変更せずWebPへ形式変換。継ぎ合わせ、数値変更、再組版、描き直しなし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

教育、診察の実技、制度の連携を別々に提案
表2の左列には、早期の気づき、診察の技能、コミュニケーションの調整、併存する病気の評価、専門職の連携、継続的な受診、診療環境という七つの論点が並んでいます。右列では、最初の三つに医学教育と実技、次の二つに多職種の検討や診療上の指針、最後の二つに制度上の対応を結び付けています。

引用元画面:BMC Medical Education(2026-11-04取得)/Y. O. Mukhamedshina, R. A. Fayzullina, I. A. Nigmatullina, C. S. Rutland, V. V. Vasina / BMC Medical Education/原典の条件:CC BY 4.0本文の説明・検討のために引用。原典:Health care providers’ awareness on medical management of children with autism spectrum disorder: cross-sectional study in Russia原典の表示内容を変更せずWebPへ形式変換。継ぎ合わせ、数値変更、再組版、描き直しなし。
図を原寸で確認する(図の中を横に移動できます)

著者の提案は、知識を学ぶこと、診察で関わる技能を身に付けること、専門職や制度の連携を整えることに分かれます。知識の講義だけで終わらず、診察中の対応と、受診を続ける環境までを扱っています。提案した対策の効果は、今回の調査では検証していません。
発達の診断に限らず、日常の医療を受けるために
学生・研修医の63.5%は、教育課程でASDの特徴や対応を学んでいないと回答しました。著者は講義の存在と、十分な学習をしたという自己認識の隔たりにも触れています。勤務年数とASDの特徴の理解との間に、正の相関は得られませんでした。
調査したのは、医療者と家族が2020年に経験したことです。発達の診断を受けるときに限らず、子どもが日々の医療へどう関われるかを、受ける側と提供する側から尋ねています。
この記事のまとめ
- 診療する側と、受診する家族の経験を集めた
2020年に医学生・研修医247人、精神科以外の医師100人、ASD児のケア提供者158人がオンラインで回答しました。医療者と家族という、それぞれ別の回答者集団の経験を並べています。
- 発達の診断に加え、日常の医療を受ける条件を示した
知識に加え、診察での関わり方と、受診を続ける仕組みを著者は挙げています。日常の医療を受ける条件を、家族と医療者の両方から調べました。
- 日本の案内には、受診前の準備と学校・医療の連携がある
発達障害ナビポータルは、絵や写真による事前の説明、健診の順番や場所の工夫、保護者の同意を得た情報共有を挙げています。ロシアの受診経験と読み合わせると、本人への説明と、家族・医療者が共有する情報の両方に目を向けられます。
日本の参考資料:発達障害ナビポータル:医療との連携 - 知識の説明と、実際に受診できる準備をつなぐ
受診前に本人へ何を伝えるか、どんな配慮や情報を医療者と共有するかを考える材料になります。医療者の経験と家族の受け止めを並べたことで、同じ受診を違う立場から聞く意味が見えてきます。
日本の参考資料:発達障害ナビポータル:医療との連携
日本の制度・資料の確認:2026年11月4日。
出典
Health care providers’ awareness on medical management of children with autism spectrum disorder: cross-sectional study in Russia
原典日:2022-01-10 / 取得:2026-11-04
画像について
冒頭のイラストは、子どもと家族の受診に備える診察室のイメージです。調査を行った医療機関や、特定の診療方法を再現したものではありません。



